*多奈side to Bad Ending*

世間はもう師走に入り、忙しさが出てきたところという感じがする。
有希がいなくなって、一週間は過ぎただろうか…
正確に何日経ったとかいう感覚はない。
太陽が昇って沈む。それが何回繰り返されたか。
でも、確実に私は落ち着いてきている。
あの夢も見なくなってきた。
それは、どこか悲しいものもある。
夢に出てこなくなったということは、もう有希の死に特別な感情を持つことがなくなった、ということでもあるような気がした。
忘れてはいない。でも、確実に薄れていっている。
時間が経つにつれ、あの激動の二日間も今は亡き、遠野有希という親友との“思い出”となろうとしていた。
世間でも彼女の“自殺事件”は風化して、もう誰も話すことはなくなっていた。

その日の昼。
何気なく、ニュースを見ていると…

「先月、女子高生が自殺した千年谷県立高等学校で、後追い自殺と見られる…」

私は、テレビから視線を外せなくなった。
金縛りというものだろう、四肢が頭からの命令を聞かない。
テレビに名前が出る。

『楠木 遙さん(18歳)』

「ウソ・・・有希の幼馴染が自殺なんて・・・。」
有希が楽しそうに彼女のことを話しているところが蘇る。

『楠木遥って言うんだけどね、私の幼馴染で勉強も出来るあたしの大切な親友なんだ。
不器用で、音痴だけど、やるときはちゃんとやるし、世話好きなおねーさん役って感じかな。
このごろ胸が大きくなっててさ、ちょっと憎たらしくなってるんだよねぇ。
で、遥ってさ・・・』

ちょっと頬が緩む。
でも、彼女のことを考えると、自然と気分も沈む。
「そんなに辛かったんだ・・・自殺してしまうほどに・・・」
彼女の気持ちを考えて、自分は彼女の辛さには到底及ばないと思った。
自分が一番辛いと思っていると考えることもあった。
でも、自殺までは考えなかった。
精々、魘されて、塞ぎこんで、記憶を辿って悲しんだ程度だった。
でも、彼女は・・・。

そして、私はある決断をした。
有希が生きられなかったこれからを自分が大切にする。
そして、有希の元に逝った彼女の幼馴染の分も。
その二人は私とのつながりは無い。
でも、私にはある。
一方通行のつながりはつながりとは言わないかもしれない。
でも、彼女たちのぶんまで、私が生きる。
二人にはいい迷惑と思われるだろう。
でも、それが自分に出来る最善のことだと思ったから。

窓の外は快晴。有希と別れたあのときのような・・・。
でも、もうあの別れを悲しいとは思わない。
時間が流れたからという理由がないわけじゃない。
それを思い出として、温かいまま心にしまっておく。
いつでも、その思い出を微笑みながら思い浮かべることが出来るように。
それが私の“正義”である。
そして、有希を見習って胸を張って生きようと思う。

もう、私は自分を責めたりしないし、後悔もしない。
それが、雪のためでもあると思うから。
だからまた来年、綺麗なイチョウを見ようね、有希・・・
---End---

__________________________________

一応、「バッドエンド後」ですね。
確か、自殺とか高校生だとニュースで名前が出なかったような気が・・・(汗
半ば強引ですが、「多奈が一方通行の関わりでも、それを背負っていく」み見たいな描写がしたかったので、こういう終わり方で勘弁してください。
それと、楠木遙との間接的なつながりを付け加えてみました。
彼女が出てこないとバッドエンド後の設定の意味がなくなっちゃうんでw
自分としては、結構がんばったような気がするのですが、みなさんの感性に合いますでしょうか。
叩きたいだけ叩いていただいて結構ですので。あ、決してそういう趣味ではないことはご理解くださいw
こんなものにお付き合いしていただき、ありがとうございました。
                             ―とろ―