*繋ぎ*


――十一月二十四日――
ぷるるるる〜
ぷるるるる〜
がちゃ
「もっしも〜し!遙〜!?もちろんお相手はこのあたし、遠野有希でぇ〜っす!」
「・・・楠木遙はただいまの瞬間に通話を拒否しました」
「ちょっとまてぇ〜っ!!まだ何も話してないってのっ!!ああっ!?ホントに切らないでね遙〜!!」
 
電話をしたのは”あの日”の前々日だった。
私たちはいつも通りにどうでもいいこと、
受験の話、おいしい店の話、学校の話…など、
そんなことをしゃべるのが日課のようなものになっていた。
受験勉強のうっぷん晴らし、というのもあったかもしれない。
 
その日も、やっぱりどうでもいい・・・・・・他愛も無い話だった。
 
電話口はいつも通りに親友の声を伝えている。
「ああ〜っ!嫌になるー!毎日勉強勉強勉強勉強〜〜って!!
 まったく、何が楽しくてこんなことするんだかっ!」
「・・・大学に入るため」
「んなことはわかってるっつのー!くぅっ!折角の・・・折角の青春時代なのにー!!青春かむばーっく!」
悲しさと悔しさと、その二十倍くらいの八つ当たりは携帯電話を握る力へと変換される。
残念なことに、か弱い女子高生である私では、直方体の移動機器を破壊できそうになかった。
落書きまみれのノートと折り癖のついていない参考書が置かれた机に足を投げ、椅子の背もたれに全力で自らの体重を預ける。
窓の外には十一月の青空。差し込む柔らかな陽光。
イチョウの舞う街路樹を思い、絵筆を持ちたい気持ちが浮かんでくるのを必死に抑えた。
電話越しの友人に何度も「女の子の部屋じゃない」と言われ続けている自分の部屋。
本棚の下段には、サバイバルブックの隣に編み物と料理の本が並んでいる。
上段には、化粧水とライフル弾の薬莢。
非常に残念ながら、このアンバランスさは友人からの理解と感動を得ていない。
部屋の隅に置かれた大きめのコンポからは八十年代のジャズミュージックが流れていた。
そんな描写を置いていくように、幼馴染との電波を介した他愛も無い話は続く。
右手に握られた言葉だけを届ける機械が、私のオーバーリアクションを相手に届けていくれないのが少し不満だった。
「何言ってるんだか・・・。もう高校3年生の秋よ?青春時代はもう終わったようなものじゃない?」
「終わらせてたまるかーっ!まだ私は夕陽に向かって走ったり、日本全土を騒がせるようなこともしてないんだよ!?」
「しないでいいわよそんなの・・・(汗)」
「くっ、老けた高校生め・・・。」
断言する。
人には情熱が必要だ。少なくとも私こと遠野有希にとっては人生の全てと言ってもいい。その上にロマンスや逆境や青春がトッピングされれば最高だ。
その為なら、いかなる努力も苦労も惜しまない。むしろ、その努力と苦労こそが目当てなのかもしれない。手に入らないからこそ、人は必死に手を伸ばすのだ。
誰に語るわけでなく勝手に自分の中で盛り上がってみる。しかしながらそんな熱いハートと裏腹に、目の前の参考書達は徒党を組んでクールな現状を伝えていた。
思わず溜息をこぼす。青春溢れる高校生活の最後のイベントが参考書とノートと友達になることだなんて、なんと悲しい結末なのだろう。
若干赤茶がかかったショートボブの前髪を指で遊びながら何の気なしに後ろを振り返れば、買ったばかりのレディーストレンチコートがコートハンガーに掛かっているのが見える。
一ヶ月前。探偵映画にどっぷりとハマってしまった結果であるが、一切後悔はしていない。
福沢諭吉を数人犠牲にしてしまった事実には若干涙が流れたが、今となってはお気に入りの一着となっている。
―――このコートを着て散歩でもしようかな。そういえば、そろそろイチョウの見ごろだったっけ・・・。
窓の外に広がる、雲一つない快晴。
きっとイチョウの彩りが綺麗に映えるだろう。その絵を想像しては胸を高鳴らせる。
自分の正義を貫く事。人生に妥協しないこ事。常に胸を張って歩く事。
遠野有希三大行動原則を心の中で唱える。私はイチョウが見たい。勉強もそれなりにやる。だから、どっちもやる。私は人生に妥協しない。
既に私の頭の中では周辺地図が展開していた。少し頬が緩む。
しかしながら、それも僅かな時間だ。散歩は一時間もせずに終わる。例えイチョウが散り終えても、参考書達は恋人のように私を待っていてくれている。
数時間後には椅子に座り、彼らと熱い視線で見つめ合うことは避けられない。
―――何かこう、物凄いハプニングでも起きちゃわないかなぁ・・・。
―――そう、例えば。
「くぅっ、この胸を熱くたぎらせるような事起きないかな〜っ!!黒服のお兄さんに追いかけられるとか!」
「あー!うるさいっ! ・・・つまりは受験勉強でうっぷんがたまっている、と?」
「うむ、ご名答!そこでね、この味気ない生活を少しでも潤す為に!!」
「為に?」
「・・・どっか行こうよぅ〜・・・。もう受験勉強いやだよぅ・・・」
「結局そうなるのね・・・。確か先週もそうじゃなかったっけ?」
「ええーい、何とでも言えー!息抜きの重要性を考えよう日本国民ー!!勤勉は毒なりー!!」
「はいはい・・・。まぁ、実際私も疲れてきた頃だからいいけど・・・」
「おおーっ。さっすが遙、話せるね〜♪」
「こうやって、私も流されるから駄目なのよね・・・」
「よいではないか〜♪んじゃ今週の日曜日、決定〜!」
「しょうがないか・・・。そうなったらとことん羽を伸ばさなくちゃね」
「その通りっ!人間、遊ぶ時は遊べ!寝る時は寝れっ!これが一番なのだっ!!」
「シンプルね〜・・・。まぁ、私も駅前の甘味屋のパフェが恋しくなっちゃってね・・・」
「いよっ!この超絶ハイパー激甘党スペシャル!蜂蜜一気飲みクイーン!!」
「そんなことするかっ!!甘党は認めるけど!」
「あははっ、じゃ、早速カレンダーに印つけないとね。
 『甘党楠木遙れじぇんど 〜ドキッ☆蜂蜜まみれの弁論大会(ポロリのみ)〜』っと」
「・・・つっこみ入れる気力もないわ・・・」
「ええ〜。つっこみないと、カレンダーにホントに書いちゃうよ?」
「あ〜もう、好きにしなさい」
「やれやれ〜。こまった子だねぇ・・・かきかきかき・・・っと」
「・・・本当に書くのね・・・」
「何を言う!書けって命令したじゃない・・・嫌がる私を無視して!!」
「した憶えはないっ!!」
「あははははっ。さー、これでやる気が2割増しだー!がんばるぞー!ドラクエのレベル上げ!!」
「勉強しなさいってのっ!!」
「ちぃっ。しかたない・・・。今日は遙のお願いに免じて勉強してやるっ!だが!明日もこうなると思うなよー!!!」
「・・・・・・じゃあ、やらなくていいわよ?代償は大きいけど」
「・・・・・・私が悪うございましたぁぁ〜・・・しくしく〜」
「まったくもう・・・」
いつものノリとテンポ。
「さぁ、日曜は遊ぶぞー!もう勉強なんて一生したくなくなるくらい遊ぶぞー!!」
「意味ないじゃないっ!」
今、こんな瞬間を過ごしている時間こそが幸せというものじゃないか、と。
そんなことを漠然と考えていた。

電話が終わって、コートを着込んで家の外に出る。
木枯らしの吹く季節。
冷たく澄んだ空気を目一杯吸い込むと、体までもが澄み渡っていくような気がした。
チェックのミニスカートをなびかせ、ミリタリー風の編み上げロングブーツの足音を高らかに鳴らしながら、枯葉の舞う住宅路を歩いていく。
腕を上げて背筋を伸ばす。見上げた空は、原色の青をどこまでも広げていた。

* * * * * * * * * * * * * *

――十一月二十六日――

「・・・あれ・・・?」
気づいたとき、私はイチョウ並木の真ん中で立ちすくんでいた。
風も無く、はらはらと落ちる黄色の雨の中に朝日が差し込んでいた。
―――何で私、ここにいるんだっけ・・・?
記憶を辿っていく。幼馴染と電話をして、受験勉強にうんざりして、散歩がてらイチョウでも見に行こう・・・そんな事をしていたのを思い出す。
家を出た後から並木道までの記憶がすっぱりと無いが、何故だか不安には思わなかった。
夕方に出かけたはずなのに、腕時計は二日後の朝の七時を指していた。
でも、何の問題も無いという感触が漠然と、それでいて確実に残っている。
そして、不思議で溢れ返る状態の中、私は私の信念を貫けている事を何故か確信していた。
そんな感情だけが、ただ心に刻まれていた。

朝日を浴びながら、イチョウ並木を歩いていく。落ちたイチョウの葉を踏む音が響く。
一本のイチョウの木の下。
一人の女の子が、イチョウの舞い上がる原色の青空を見つめていた。
長い黒髪と黒いミディドレスが特徴的な女の子は、私に気づいて視線を送る。
瞬間、並木道を強い風が吹き抜けた。
黄色の葉が踊る。青空へと舞い上がったイチョウは明るい冬の日差しを浴びて、ゆっくりと雪のように降り注いだ。
幻想的な光景の中。女の子は私を見つめ、柔らかい笑顔を作った。
通行人に向けるには優しすぎる、そんな笑顔だった。
「・・・綺麗ですね」
「うん」
しばらくの間。私とその女の子は空を見上げ続けていた。
これからも憶えていく光景を、一緒に見上げ続けていた。
不思議な程に優しい、沈黙の時間。見上げた空は、どこまでも青く、広かった。

十一月二十六日。その日、たったの数分だけ、雨が降った。
雲ひとつ無い空から、大粒でまばらな雨粒が降り注いでいた。
空から降り注いだ雨粒が朝日に反射し、街中を輝かせていた。
コンクリートの地面が輝く。水たまりには青空が広がっている。木々の葉に浮かぶ水滴は宝石を散らしたかのように輝いていた。
雨粒に輝くイチョウの葉が原色の青空に踊る。
その光景を、私は笑顔で見つめていた。
―――今日もきっと、楽しいことがあるに違いないっ!
昇り始めた太陽の光を背中に受け、少しだけ、強く足を踏み鳴らした。
今日もまた楽しい一日を過ごすために。



 そ し て ・・・




「ごめんね、日曜日・・・行けなくなっちゃったよ・・・」

  私は、その日の放課後に死体として発見された。

* * * * * * * * * * * * * * *

イチョウ並木を駆け抜ける。すっかり見入ってしまっていた。
「これじゃ学校に遅れるっ!
ほぼ全力疾走で家に駆け上がる。
目を丸くするみーちゃんを尻目に朝ごはんを掻き込み、さっさと服を着替え、また全力疾走で学校へ向かう。
「遙、先に行っちゃってるかなぁ」そんなことを考えながら駅に駆け込む。
そして、「おーす、遙!」と遙の背中に声をかけて、“私の今日”がまた始まる。
学校に着くまでに今までと変わらない他愛も無い話をする。
しきりに遙やクラスの皆が「大丈夫なの?」と聞いてくるが、自分にはさっぱり身に覚えが無い。
聞くところによると、昨日の体育の時間に男子の硬球がかすって血が噴出し、そのまま私は倒れたらしい。
当然、「何故にそんな面白そうなことを自分は覚えていないのだっ!?」
「面白い訳ないじゃない!ホントに心配したんだから!」
というやり取りがあったのは言うまでもない。
学校に着いてからもは、授業は窓の外も見てたりするけどそこそこ真面目に聞いた(と思う)り、クラスメートと笑って過ごして“私の今日”を精一杯楽しむ。
帰りも朝みたいな綺麗なイチョウが見えるかなぁと思ったり、今日のテレビは何があったかとか、今まで毎日考えてきたことを今日も考えていた。

その日、“ 私 の 今 日 ”が「終わり」を告げるとも知らずに・・・。

* * * * * * * * * * * * * * *

・・・その日。
遙の下駄箱を見たのは偶然だったし、そこに手紙が入っていたのはさらに偶然だった。
「(手紙・・・イコールでラブレターだなっ!?ぐっ、遙め・・・)」
悔しがりつつも、携帯電話が普及した今時こんな古典的なものが見れたことに頬が緩ゆるむ。
思わずそれを手に取る。シンプルなレターケース。
「・・・カミソリは入ってないか・・・」
光に透かしてみる。中身は紙が一枚。うっすらと文字らしきものが見える。
「・・・・・・ん?」
なんとなく違和感を感じ、封を開けようかという考えがよぎる。
この決断こそがすべての原因であったのだけれども、それがわかるわけはなく。
「(遠野有希人生モットーその16。見つけた宝箱は即開けよ。開けずに後悔するより開けて惨敗)」
とか考えていたわけで、既に頭の中はどのようにうまく開けるかということしかなかった。
勿論、いくら私がこういうおもしろいこと好きとは言え普段だったらこんなことはしない。
けれども、何となく嫌な予感がしたのだ。


封を開けて、私は自分の間の良さに驚いたりした。

* * * * * * * * * * * * * * *

午後4時。美術室。部活で居慣れた美術室は夕陽に染まりかけていた。
珍しく誰もいない美術室で、なんとなく美術部時代の思い出を引っ張り出す。
「(そーいや、まだ私の絵、残ってるっけ・・・?)」
探そうかな、と思った時に美術部のドアは音を立てて開いた。
・・・現れた女の子は目を丸くして驚き、次の瞬間には鋭い眼光へ変わっていた。

【高城 とうな】
「・・・どなた・・・ですか?」
【遠野 有希】
「それは全力であたしの台詞っ!・・・って、一人?
こーゆーのって人数連れてきて数押しでぼっこぼこー、ってのがセオリーじゃなかったっけ?」
【高城 とうな】
「・・・・・・」
【遠野 有希】
「・・・遙は来ないよ。っていうか、こーゆーことがあるってことも知らないし」
【高城 とうな】
「・・・余計なことをしないで下さい」
【遠野 有希】
「うーん、私もこーゆー暗い話は苦手なんだけど。やっぱさ、友人の危機を見逃せるほど冷血なキャラはしてないわけだよね〜」
【高城 とうな】
「・・・・・・」
【遠野 有希】
「悪いけど、次も妨害するからそこんとこよろしくー。そりゃもう、遙が気づかない位の暗躍をしてみせるからねっ!」
【高城 とうな】
「・・・・・・」
【遠野 有希】
「おおっ、すんごい眼光だぁ・・・。
ま、落ちついておちついて。何があったのかわからないんだけど、遙が何かしたの?」
【高城 とうな】
「・・・あなたには関係ないことです」
【遠野 有希】
「こっれが関係すんだなー!私には無関係っていう関係があるっ!」
【高城 とうな】
「・・・・・・」
【遠野 有希】
「屁理屈じゃーん!って、ツッコミないとちょっと寂しいんだけど・・・」
【高城 とうな】
「・・・・・・」
【遠野 有希】
「・・・。あなたには悪いけど、あたしは遙の友達なの。守るべき対象なの。ピンチの時には高笑いと共に現れる二枚目ヒーローなんだよね。
だからあなたのしようとすることも全力で妨害する。そりゃあもう、あたしの生涯と青春と浪漫をかけて成し遂げるくらいの勢いでね」
【高城 とうな】
「・・・手を、引いてもらえませんか」
【遠野 有希】
「だーかーらー。それが出来れば苦労しないわけだよ。何て言うかなー、約束っていうか、絆っていうか、そーゆーものなんだよね〜」
【高城 とうな】
「・・・・・・」
【遠野 有希】
「昨日の夜に『甘やかしはいけないなー』って思った矢先に、こういうことが起こるんだから人生っておもしろいね〜。
まぁ、このことは、遙が歩く先の小石を取り除くって感じで妥協しよう。うんうん」

その女の子はドア付近に立てかけてあった木の棒(たぶん手すりが外れたやつ)を手に取っていた。
1mくらいで、それなりに重量はありそう。殴られたら骨折くらいはいくかな、とか考える。

【高城 とうな】
「・・・これでも、ですか?」

そう言って、木の棒の先を私の鼻先に向ける。眼光がさらに強くなった気がした。

【遠野 有希】
「おおっ、これは脅しってやつだね!?いやぁー、生まれて17年、人生平和に生きてきたから初めてだよ、脅し」
【高城 とうな】
「・・・・・・」
【遠野 有希】
「んー、よわったねー。痛いことされて喜ぶような特殊な趣味じゃないんだけどなぁ〜」

鼻先に向けた木の棒は、さらに私の鼻先に近づく。もう数センチもないくらいに。

【遠野 有希】
「あ、殴るのなら、顔はやめてね。これでも今をときめく女子高生なんだし、顔は女の命〜って言うじゃん?
さっすがに顔に傷跡あっちゃ、面接だろーがお見合いだろーが成功率低くなっちゃうこと請け合いだし。ね?」
【高城 とうな】
「・・・殴られたいのですか・・・?」
【遠野 有希】
「だーかーらー、そんな趣味ないっつの!でも、ここで退いたら、あたしの信念が崩れちゃうわけ。
あたしは、自分の信念、性格が大好きだから、簡単にぐんにょり曲げるわけにもいかないわけだよ。
どぅゆぅあんだすたん?」
【高城 とうな】
「・・・・・・」

目を閉じ、諦めたかのように持っていた棒を下ろす。

【遠野 有希】
「んんー、わっからないなー・・・。遙が何かしたの?あー、いやいや、それじゃあ、遙になにするつもりだったの?
・・・はっ!?も、もしかしてっ!?」
【高城 とうな】
「・・・・・・?」
【遠野 有希】
「性別を超えた恋愛・・・っ!!憧れが恋心に変わる時ー!?」
【高城 とうな】
「違います」
【遠野 有希】
「う・・・。・・・そーゆー、すごーく冷静なつっこみって何か辛いものがあるね・・・。とにかく、遙に何するつもりだったの?」
【高城 とうな】
「・・・・・・忠告、です」
【遠野 有希】
「忠告ぅ?」
【高城 とうな】
「はい。・・・それだけですが」
【遠野 有希】
「ううーん・・・。それだけなら、ここに呼び出す時に使った手紙で伝えればよかったのに〜」
【高城 とうな】
「・・・そうですね。次はそうします」
【遠野 有希】
「・・・・・・」
【高城 とうな】
「・・・・・・」
【遠野 有希】
「・・・とか言いながら・・・忠告だけで、終わらせる気はなかったよねー?」
【高城 とうな】
「え・・・!?」
【遠野 有希】
「ちょっとは、その持ってる棒やらでいじめてやろ〜とか考えてたよね?」
【高城 とうな】
「・・・いいえ!」
【遠野 有希】
「だって、それ手すりだし。都合よくここに置いてあるものじゃないしねぇ・・・。あたしの勘もあながち間違いではない、と〜」
【高城 とうな】
「違います!」
【遠野 有希】
「まぁまぁ。そうムキにならないの。ますます怪しく思えてきちゃうからさ〜、ねー?」
【高城 とうな】
「・・・っ!」
【遠野 有希】
「ま、そーゆーことで、これからも何かしら妨害を企てるからよろしくね〜。さぁって、家帰って再放送のドラマみなきゃ・・・」

あたしは、さしこむ夕陽を背に感じつつ、そのまま美術室を出ようとする。

【遠野 有希】
「(この季節の夕陽、綺麗だなぁ・・・。たまには絵でも描こうかなぁ・・・)」

なんて思いながら・・・。


 
 だ か ら ・・・。




後ろで、その子が手すりの棒を上段に構えてることなんて、まったく気づかなかったわけで。

【高城 とうな】
「・・・・・・っ!!!」

ドカッ!

【遠野 有希】
「(やっちゃったか・・・。こりゃ日曜日行けなくなっちゃったなぁ・・・遙に謝っとかないと)」

遠くなる意識の中で、そんなことを思っていた。
・・・自分でも手遅れなことはわかっていたから、助けは呼ばないことにした。

(電話の電子音が延々と響く。)
ぴぴぴぴぴ・・・・・・
ぴぴぴぴぴ・・・・・・
ぴぴぴ・・・・・・ぴっ

「もしもし〜、こちら有希〜」
『あ、有希? 遙だけど、あのこの前貸した参考書あったじゃない?あれさ・・・』
電話口からは親友の声が聞こえてくる。
「あのさ、遙・・・・」
『今度の日曜日に、ついででいいんだけど・・・・・・ん、どうしたの?』
「ごめんね、日曜日、行けなくなっちゃったよ・・・」
『え?どうし』

 ぷちっ

電話を無理矢理に切った私は、なにげなく天井を見つめていた。

「あははっ、これが限界かぁ〜・・・」

誰に言うわけでもなく、私は独り言を言う。

「な〜んか、実感わかないなぁ・・・」

どうにも、頭がぼんやりしてしまう。夢の中にいるみたい・・・とでもいうと詩人じみていいなとか思いつつ。

「あ・・・」

かたん

携帯電話が手から零れ落ちる。手に力がはいらない。感覚という感覚が次々と斬り落されているような気分がする。
唯一、制服が身体に貼りつく感覚が妙にリアルで嫌だった。

「・・・なんでこうなっちゃたかなぁ・・・」

少しずつ、しかし着実に、私の視界が小さくなっていく。

暗くなってゆく。 暗く・・・  暗く・・・   暗く・・・

「・・・でも・・・」

私は、たまらなくなって自分自信を抱きしめる様に腕に力をこめた。

「・・・それでも・・・・・・死にたくなかったよぉ・・・・・・」

世界が闇に閉ざされてゆく。私は一人で、たった一人で震えている。
怖かった。一人。孤独。暗闇。血。そして・・・死。
また、何かが振り下ろされた気配がした。
時間が止まった様にゆっくりと進んでいく。世界全てがスローモーションになってしまったように。
そんな、戦慄すら止まる時間の中で、私は一つのことを考えていた。

(私がいなくなったら、どうなっちゃうんだろう・・・?やっぱり遙は泣いちゃうんだろうなぁ)

もはや恐怖もなくなっていた。あるのはただ漠然とした疑問と・・・・。
それと・・・大好きな、親友の顔。

 「・・・遙・・・」

 (がすっ)

 この瞬間に、私、遠野有希の人生には・・・
          もう二度と光が差し込まなくなってしまった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ここからは皆さんが知るとおり、「星のない空の下で」に続くんだと思います(多分)
まぁ、二次創作というより文章の書き写しですかね。自分が書いたところなんて、数行ですしw
少々手も加えましたが、おそらく原本とは内容は変わってないはず。
創作じゃないですね、はい。すみません。(下手だから謝ってるんじゃないからねっ、バカッ!(何

なんか言いたい事があったらなんなりと。
尻キュウリでも尻ウインナーでもくれてやります。

こんな二次といえるかどうかも怪しいものを読んでいただきありがとうございました。
                                    ――とろ――     

  ↓これを読んだ皆さん全員の気持ち
  _, ,_ ∩))
(*`皿´)彡  パンパンパンパン
  ((⊂彡☆∩)) _, ,_  _, ,_
  ((⊂((⌒⌒ ((Д´≡`Д)) うああぁぁぁ ――――― !!!
      `ヽ_つ ⊂ノ
        ↑とろ